最優秀賞
波網代編盛籃「秋景」
増居 外也〔栃木県大田原市〕
サイズ:30×47×8
まず情熱的な赤と黒のコントラストに目を奪われました。とかく観念的な着彩になりがちな中で、作り手の感情を色彩で表現することに成功している作品と言えます。どっしりとした温かみのあるフォルムの中にも両側を透かして透明感を演出するなどリズムを感じさせる細やかさが光ります。人をひきつける色彩と、その期待を十分に盛りつける事の出来る飽きのこないシンプルな矩形は作者の感性の良さが窺われます。
-日原 公大-
優秀賞
花籠「夕顔」
橋本 忠昭〔千葉県佐倉市〕
サイズ:29×30×48
柾割竹で本体を編み、四つ目の隙間を利用して、籠全体に刺し竹を縄目状に立体感をあらわした。取手と籠の接点で、取手先端を5本に振り分け、竹の太さに変化つけ、藤巻き、藤飾りの技法にも神経が行き届いている。
染色物の多い作品の中で、特に真竹のナチュラルな素肌の美しさが一段と目を引いた一品である。経験年数3年とは思えない優秀作である。
-綿貫 清-
連続くもの巣編み花かご「和らぎ」
保木元 智香子〔茨城県土浦市〕
サイズ:29×30×48
円形を基本とするかご型の左右に張り出し部分を設けた、少し変型の籠である。そのすべての稜線に縁取りが施されている。作者は第6回展でも連続くもの巣編み技法による作品でデザイン賞を得ているが、それは稜線処置のないもので、今回はこのことによって力強い造形性を一層強調することに成功している。一つ高い賞を得た所以である。
-金子 賢治-
花篭「絣」
寺島 秀昭〔群馬県北橘村(現 渋川市)〕
サイズ:12.5×12.5×34
中央から上下に絣の文様に編み素材そのものの色調が美事に生かされている。白色は真竹で黒色は黒竹を使い共に表皮そのままの色である。編方は立竹を廻し竹の外に間をおいて出して編む飛越編であり形も上部の柔らかな曲線は好感が持てる。
このような作品は、時間の流れの中で変化して行く楽しみもあり優品である。
-勝城 蒼鳳-
デザイン賞
花六ツ目行燈「花影」
藤田 千種〔栃木県西那須野町(現 那須塩原市)〕
サイズ:35×35×50
直角三角形を四つ組み合わせた単純なデザインは、デザイン賞にふさわしい。花影の作品名が示すとおり、花六ツ目に編んだ編み目からは、幻想的な光がこぼれてくる。枕もとに置いたら楽しい夢が見られそうである。
-柏村 祐司-
花籠
渋谷 房子〔栃木県大田原市〕
サイズ:26×26×16
竹編組は四つ目に始まり、四つ目に終る。と言われるほど、その工程は簡単であるが反面、熟練を要する技法でもある。
この作品の美しさは、基本である材料作りが原点である。数百本もの竹ヒゴを正確に作ることによって四つ目、網代編みの美しさが表現 される。籠に組まれた横竹のアクセントを含め、全体のバランスを考えながら、女性的感性で巧にまとめた秀作である。
-綿貫 清-
波網代二重編花篭
内田 勲夫〔埼玉県岩槻市(現 さいたま市)〕
サイズ:26×26×30
胴の編み方が爽やかで印象的である。廻し竹の幅を違えて波網代に編まれていますが、この無理のない曲線がこの作品を引き立たせている。
工芸は明るく楽しくいつまでも身近に置いて楽しめるような違和感のない作品は愛される作品であり、この作品からは充分その要素を窺うことが出来る。
-勝城 蒼鳳-
新人賞
ふた付き盛篭
星野 芳昭〔埼玉県さいたま市〕
サイズ:30×31×15
すす竹色に着色した作品の多い中、生地のままで編んだこの作品には、新人らしい清楚な感じが漂う。太いヒゴと細いヒゴをたくみに編んだ本麻の葉模様も美しく、将来性が期待される作品である。
-柏村 祐司-
輪口編花篭
高瀬 さかえ〔栃木県大田原市〕
サイズ:15×18×42
花籠は花を活けて花を引き立たせる作品と籠そのもので観る人の心を引き付ける作風の作りがあり、この作品は花を活けて見ると良さが分かる作品と言える。編み方は加飾過多にならず竹の味が生かされている。
このような感性を伸ばすことで、新たな竹工芸の道を開くことを期待したい。
-勝城 蒼鳳-
松葉編二重花籠
倉本 輝明〔栃木県黒磯市(現 那須塩原市)〕
サイズ:23×23×27
二重編のこの作品は竹工芸に魅力を感じた方は一度は作って見たい作品である。縄目編、松葉編、内籠の柾割での網代編、縁作りの藤の巻き方、このような技術、技法を短期間でマスターされ、これを基にこれからの作品をどのように発展させて行くか楽しみである。
-勝城 蒼鳳-
無双篭(3ケ組)
後藤 幸雄〔栃木県西那須野町(現 那須塩原市)〕
サイズ:19×19×5
いわゆる無双編みの技法による篭で、見込みに工夫がしてあったり、三つが入れ子式になっていたり、その新鮮な作風が新人賞に推された理由である。緑の程よい丸み、控えめに整えられた光沢など、実用性にも富んでいる。この感覚を一層延ばしこれからも精進していただきたい。
-金子 賢治-