最優秀賞
盛籃「残照」
佐藤 敦子〔千葉県佐倉市〕
サイズ:37×58.5×11
「残照」の名にふさわしい赤と黒の色づかいが印象的である。この赤と黒とをたくみに配した三本網代の編み組は、正確な図面をもとにして編んだのであろうか。鋭い感性を感じる。また、側の千筋が底の複雑な網代と好対称をなし軽やかさをかもしだしている。みごとな作品である。
-柏村 祐司-
優秀賞
櫛目編花籃「春を待つ」
東 次男〔埼玉県鴻巣市〕
サイズ:22×30×35
審査をしていて僕はプロをやめたくなった。アマチュアというのはこんなに感性豊かなんだ…と。プロが失いつつある感性だ。
シンプルな形だが上縁が拡がりながら伸びていく形が実に良く、素直な曲線がきれいに表現できた。「春を待つ」というネーミングが憎いネ。水芭蕉の花や葉が空に向って背伸びを始めた形のようで素晴らしい。どんどん空間に伸びて行く雰囲気がある。
極細の櫛目もきれいに、籐の右捲き左捲き苦心したネ。やってくれたネ。腰から下の部分の交差による透かしがよく効いている。胴脇につけた茶色の線が、強過ぎず、弱からずピリッとはまったと思う。
縁のまとめや、底の処理などのディテール感、破綻なく仕上がった。
ほんとにきれいだ。オメデトウ。
-宮﨑 珠太郎-
風車組花籃「稜角」
飯村 幸雄〔東京都三鷹市〕
サイズ:28×28×25
平割による鉄線編の花藍である。全体の形が三角形の面を組み合わせたように見えるが、底を組んだヒゴが縁まで続いている。
このような編み方は高度な技術と感性が求められ、日頃の研鑽が身を結んでいる。造形も面白く色調も味わいがあり、見る角度によって変化のある形は楽しい。
-勝城 蒼鳳-
交色 鉄線編 取込籃
磯飛 節子〔栃木県黒羽町(現 大田原市)〕
サイズ:28×25×12
二年連続しての受賞が物語るように著しく技術の進歩の跡が見られます。三つの色を使い分けて編んだ六角形の蓋ものですが、表面の重厚がありながら威圧感のない彩色と蓋の中の素地の色と対比がとても新鮮で成功しています。柔らかいフォルムと色合いがバランス良く、暖かさを感じさせ作者の人柄が滲み出ている作品です。
-日原 公大-
デザイン賞
手さげかご「装」
井上 守人〔栃木県西那須野町(現 那須塩原市)〕
サイズ:14×28.5×38
主たる部分の三本とびのスカシ網代が何とも軽やかな感じがして良い。そしてこの軽やかさがこげ茶色の縁と取っ手とによりピタッと引き締まり絶妙なコントラストをなしている。
この作品、花かごとして用いても面白そうである。伝統的なかごの世界に現代的なデザインを盛り込んだ中に作者のセンスの良さを感じるのである。
-柏村 祐司-
花籠
安達 良一〔栃木県二宮町(現 真岡市)〕
サイズ:22×39×22
縄目編から松葉編、胴は透かしのところに縄目編の動きのある線を生かしてあり、横長の形の中に涼しさを演出していて素材の特質が良くでている。色合いも軽やかさを安定させていて、用と美のバランスが取れている。技巧に走りがちなところを感じさせなく表現されたところに良さがある。
-勝城 蒼鳳-
広口花器
寺島 秀昭〔群馬県北橘村(現 渋川市)〕
サイズ:34×34×43
デザイン賞にぴったりの作品だといえる。形はシンプルな朝顔型だが、上下の拡がりのバランスが、ちゃんと安定性を確保している。造りもしっかりして、竹製品にありがちなグニャグニャというのが無い。好きだヨ。
良く良く見ると造りは大変に凝っていて、丸竹を16割にしたものを、幅を揃え、裏を削り、面取りをする「竹拵え」をすました後に再び丸竹に戻して、何食わぬ顔して編み登り、編み拡げしている。
手に取って「オヤ、二重編みか」と思ったら、さにあらず何やら変則的な縄目編みらしい。僕は「寺島君てエのは嫌な奴だナ」と思った。一本の竹からこんな素敵な造型を編み出し、こんな不思議な技を駆使して、しかもケレン味がない。嫌味がない。
これは、ホントにデザイン性の強い計画的な頭脳が働いた仕事だ。ネーミングだけは一考されたい、感性豊かなネーミングを。
-宮﨑 珠太郎-
新人賞
差し六つ目のポシェット
保木元 智香子〔茨城県土浦市〕
サイズ:5×22×18
六角形のフォルムに合わせた差し六つ目の技法は、何でもない様でピシャリと視覚的に調和して気持ちがいい作品です。更に、ふっくらとしたボリュームが充実感を感じさせ、なんとも豊かな気分になります。蓋部に使用した柔らかい肌合いを持った輸入材の木と、堅い表皮の竹との組み合わせは、小さなポシェットの中に質感の変化を与えていて、深い味わいを醸し出しています。
-日原 公大-