第19回全国竹芸展入賞作品(平成26年度)

最優秀賞

 佐藤 治生〔大分県大分市

サイズ:60×60×18

 創、正に創に相応しい造形である。竹と言う素材を探究され竹の弾力を存分に生かした作品である。10本を1束とし、その内の1本だけ染めて20束を用いて下部から上部に左捻りに立ち上げて広げ、加飾に頼らず線の美を強調し竹の魅力を極限まで生かし竹の爽やかさを軽やかな動きのある形体は好感を呼び、優品である。

-勝城 蒼鳳-

優秀賞

連続枡網代編花器 “蒼い箱”

 八木澤 洋志〔茨城県笠間市

サイズ:22×24×24

 その色と形から、審査会場で最も目を引いた作品の一つである。2ミリほどの幅の真竹平割材を、竹の質感を残すために裏を表にして編んだ鉄線編を2枚重ねて底とし、胴部は連続桝網代に編み、上部で水平にすぼめてフラットな口作りに纏めている。

 この作品の特徴は何と言ってもその色にある。青磁を思わせる淡い青緑色は、色漆を塗って拭き取る所謂拭き漆を3~4回繰り返し、最後に白漆を塗って拭き取ったと言う。

 本作品はその仕上げの効果によって嫌味のない柔らかな青緑色になっている。色漆で着色することは漆の世界ではしばしば行われていることであるが、竹の世界では新しい試みと言ってよく、それが成功している。網代の胴編みで上部を水平にすぼめた形も竹の作品では珍しく、やや上部に向かって末広がりの形も均整がとれている。編終わりの竹の端の処理はややラフであるが、この作品に限って言えば、その部分が雪の結晶を思わせ、ややもすると硬い感じになる網代の作品に柔らかさを与えている。高台と縁造りは一考を要す。

 先人の亜流の出品作が多い中にあって、新しい色と形に取り組んだ作者の勇気と意欲を評価したい。今後に期待の持てる若手作家である。

-藤塚 松星-

技能賞

交色波網代編盛籃

 内藤 節子〔栃木県大田原市〕

サイズ:37.5×40×24

 網代編を2枚重ねにした手付盛籃である。

見込みは板割りの細竹の本数を変える事で波文様を表現している。長年の経験に裏打ちされた高度な技術を有しており、当て縁による縁作りが多い中で本作品は束ね編みを取り付けることにより全体に特異な印象を与えている。

 高原の森の中の湖を連想させるデザインである。

-田中 旭祥-


デザイン賞

オブジェ「臥龍」

 杉浦 功悦〔大分県別府市〕

サイズ:41×60×61

 公募作品の中で数少ないオブジェ作品である。この賞には二点が最終候補に残り、審査員の協議で決定。

 この作品は、三本合せのヒゴを三つ又状にし、互いにかみ合せ一辺とした、三角形の連続体。三角形の重なりと捻りを加えられた形には躍動感があり、龍の動きをも感じさせる。作家の独自性が表現された作品である。

-本間 秀昭-


新人賞

幸運のクローバー

 岡田 晃〔大分県別府市〕

サイズ:60×60×20

 愛らしい四つ葉のクローバーがスケール感ある拡がりを見せている。網代編を変形させたものを、5回以上重ねて縁どりすることで、四つ葉がそれぞれ中央で膨らみ、編の隙間が生み出す奥行きが視覚的な効果を上げている。四つ葉の各境界線は、葉の裏側で脚となり、四つ葉をしっかりと立ちあげている。脚の跳ね上がった部分の先端よりやや手前に竹の節がくるようにするなど、隅々まで造形意思の行き届いた意欲的な作品である。

-外舘 和子-


餓鬼―陰翳―

  池 将也〔大分県別府市〕

サイズ:46×46×29

 充分に胴の張った堂々たるフォルムである。外側は、幅の広いヒゴを使ってうつわの全面に筋状の突起を形成し、重厚感を示している。口造りについても、その重厚さを受け止めるべく、幅広・肉厚の竹を幾重にも重ねて、等間隔に8か所で留めた。内側は、縄を敷き詰めたような荒々しさを赤でまとめ、外側の黒と強いコントラストをなしている。全体に力感のみなぎる作品である。

-外舘 和子-