第8回アマチュア全国竹芸展入賞作品(平成15年度)

最優秀賞

くもの巣編花籠

 大貫 透〔栃木県宇都宮市

サイズ:18×18×41

 古来から好まれている形態の花籠です。くもの巣編から縦網代、枡網代、横網代、四つ目編のところで外側と内側の縦竹を分けて2重四つ目編として、又横網代へと、全体の形態、色調とも落ち着いた雰囲気に仕上った素直な優れた作品である。

 取手に添えられた六つ目編が花籠の側面から上部へ延び出した曲線がとても印象的でした。天平時代の創建とされる唐招提寺金堂の鴟尾(宮殿棟飾りの“しゃちほこ”)を思い出しました。作者の良い作品を作る意気ごみが技を通して感じられた作品です。

-綿貫 清-

優秀賞

千鳥二重編花籠

 友成 晴美〔大分県豊後高田市〕

サイズ:26×26×31

 この作品は最優秀作品と同様に印象に残った作品です。技法は縄目編のように編竹3本を用いて、その内1本を幅広の竹を用いて千鳥掛けする技法です。

 美しい壷形の曲線を現すために縦竹の上下両端を細く形取り、横編竹も縦竹の形状に合わせた材料作りを行い、千鳥編を主体として途中の編目に変化を現したのみで縦竹の配色のコントラストといい、纏まった作品である。緻密に計算された慎重な技が全体を引きしめて仕上がった秀作でありますが、口元の曲輪の歪みが気になりました。

-綿貫 清-

巻き六ツ目編花籠

二本飛び八ツ目編花籃

 髙橋 定男〔栃木県大田原市〕

サイズ:18×30×19

 実に新鮮でシンプルな矩形で飽きのこない作品です。縦と横のバランスもちょうど良く、統一感が作品を支配して落ち着きと気品を醸し出しています。編みの間隔、大きさも程よく計算され、色も軽やかでこの籠にどんな花が似合うのか考えると、うきうきして来ます。作者の造形感覚の良さが窺われます。

-日原 公大-


 内藤 節子〔栃木県大田原市〕

サイズ:26×26×35

 なんと言ってもこの作品の特色はどっしりとした重量感にあります。矩形の中に三角の形を取り入れた構成は、兎角単純になりがちな四角形に躍動感をもたらす効果がありました。複数の幅のある竹を使用して中央で円くまとめた取っ手は、のびのびと量感を大きくする手伝いをしています。唯少し残念なのは下部の四隅に作られた丸い装飾です。技術が増して来るとあれやこれや作りたくなるものですが、必要なもの或いはそうでない物を選択しながら制作を続けてください。

-日原 公大-


デザイン賞

束ね手付花籃「波」

 薄井 敬二〔栃木県氏家町(現 さくら市)〕

サイズ:18×23×37

 長方形に網代で底を組み、別に染めた材料を使って波模様に胴編みがなされている。そして両サイドの立竹を無理なく大らかな曲線で纏めて全体を波の動きで表現している。このデザインの発想は現代の室内空間が変化していることに依って生まれた作品と云えると思うし、全国竹芸展に一石を投じた作品でもある。

-勝城 蒼鳳-

花丸網代盛籃

 藤原 広子〔栃木県大田原市〕

サイズ:41×41×9

 中の模様は幅を違いた材料を染め分けて網代で編まれている。廻りは煤竹の千篠で透かして立ち上げてあり落ち着いた色調で八角形の形とマッチしている。

 盛籃は夏の涼を盛るのに相応しく使われて来たものであり、千篠を通しての風の爽やかさも感じられる作品である。

-勝城 蒼鳳-


竹燈「2003夏」

 井上 守人〔栃木県西那須野町(現 那須塩原市)〕

サイズ:19.5×23×63

素材の竹の味わいを生かす形として、この形が生まれたような素敵な作品である。この瓜種形の中に燈が灯ると大きな和やかな光の揺らぎさえ感じる。麻の葉編で全体を統一してすっきりと仕上げた感性は見事であり、竹芸の前途も明るくしてくれる作品である。

-勝城 蒼鳳-


新人賞

鉄線編み手提げ篭

 鈴木 正子〔埼玉県さいたま市〕

サイズ:31×50×37

 新人らしく基本的な編みに忠実である。形はありふれたものであるが、均衡がとれ美しい。手提げ篭、いかにも女性の作品である。何を入れて持ち運ぼうとしているのであろうか。

-柏村 祐司-

輪口編花籠「さざなみ」

 橋本 忠昭〔千葉県佐倉市〕

サイズ:23×23×48

 基本は四つ目編みである。しかし、それだけでなく斜めに差した線が、さざ波のような感じをかもし出し美しい。また、生地のままを用いた部材が、新人らしい控えめ・慎ましやかな感じを出している。

-柏村 祐司-


二重編花籠

 野原 泰男〔埼玉県上尾市〕

サイズ:17×17×26

 経験年数2年5カ月とはいえ技術・デザインともしっかりしている。緻密な編み目の間に編み目の大きなものを、あたかも透かし模様のように入れたところがアクセントとなって美しい。

-柏村 祐司-