第2回アマチュア全国竹芸展入賞作品(平成9年度)

最優秀賞

松葉編花篭

 田澤 昭吉〔栃木県馬頭町(現 那珂川町)〕

サイズ:33×33×25

 繊細な作品が数多く出品された中で、この作品は特に好感の持てる作品である。編目の模様も、下部から木目編、松葉編、上部の丸味の所には室編を帯状に入れ、多くの編方を併用してあるにも拘わらず加飾過多の感じは受けない。形も色彩も現代の空間にマッチした造形と色調と云えよう。作者の平素の研鑽が実を結んだ優品である。

-勝城 蒼鳳-

優秀賞

伝統工芸の部

莨盆

 米中 英夫〔千葉県佐倉市〕

サイズ:17×26×18

 茶道の道具類も、ガラスの水指や抹茶碗も使われるようになり、時代と共に変化をしておりますので、この作品もそのような道具との取り合せも可能と云えよう。中も外も共に縦網代(たてあじろ)で統一し、色の対比により新鮮な感じを伝えている。底の見込も波網代(なみあじろ)とし、形も楕円形により全体の雰囲気も心地良く、明るい会話も生れるであろう莨盆に仕上げられている。

-勝城 蒼鳳-

クラフトの部

薫風

 南 千恵〔東京都三鷹市〕

サイズ:8×22×31

まず題名が良い。題名があることはイメージ、発想がありその心意気を大切にしてもらいたい。竹根の手、グッチやシャネルが竹根モドキのプラスチックものをデザイン要素に組み込んでいるが、私たちはそんな事を無視するフリをして越えないとならない。

枡網代編み、絞りこみ縁もうまくまとまった。ゴロガシ捲きもきれいに出来、縁下飾り捲きがさりげなく気がきいている。蝶番(ちょうつがい)の「つなぎあわし結び」もなかなかのセンスである。

機能の点からみると、バックを開いた時の混乱とか、羞恥心とか、をどう解釈するか考えて欲しい。それでもアマチュアは素晴らしい。

-宮﨑 珠太郎-


デザイン賞

伝統工芸の部

花入れ「春の灯」

 土屋 為良〔栃木県宇都宮市〕

サイズ:23×23×32

 底から口に向って広がる六角柱の形。六角柱の側面を太い竹枠の中にマス網代を組み込んだ面で区切った大胆な構図。その面の間からかすかに覗く四つめの編目。デザイン賞にふさわしい洗練された作品である。本物のスス竹が醸し出すやわらかな茶の色がまた美しい。

-柏村 祐司-

クラフトの部

丸盆

 飯村 幸雄〔東京都墨田区〕

サイズ:35×35×4

 クラフトと称するにはちょっと辛いのだが作者の意図はかなりのものだ。煤竹は大変貴重な材なので、もっと大切に加工して欲しかった。様々な色調の煤竹を並べて縦横たがいちがいに貼り付けて市松に仕上げ効果的である。が、それがピシッと仕上っているか、いないかで格が決まることなので惜しい。裏と立ち上り部分のアジロは染竹できれいに編み上げてあり、縁づくりもうまく捲き上っている。縁の下飾りもくどくなく心持良く出来上った。そこがアマチュアの怖さだ。

-宮﨑 珠太郎-


自由創作の部

茶摘み籠「行灯」

 安達 良一〔栃木県二宮町(現 真岡市)〕

サイズ:30×30×90

 標題では、「茶摘籠」となっているが、この形態は、背負い籠の形態を模したものであり、日常生活用具の形態を取り入れたところにアイデアの面白さが感じられる。副題に行灯とあるように、灯りをともしてさらに美しさが増す。塗りを施さない竹の地色が強調される野趣あふれた作品である。

-柏村 祐司-


新人賞

伝統工芸の部

白竹手付すかし花篭

 内藤 昌治〔栃木県大田原市〕

サイズ:15×15×40

 包丁で落としたあたりはいかにも新人らしいひた向きさがにじみ出ていて好感が持てる。技術的には、多少物足りなさを感じるが、今後のますますの精進を期待したい。

-柏村 祐司-

クラフトの部

菓子器

 飯田 陽子〔千葉県八街町(現 八街市)〕

サイズ:23×23×17

 昔から茶道の世界などで「八寸」という使い勝手の良さがある。この作品は23種、八寸弱で使い易い、おさまり易い寸法なのである。

 網代編みの焼きゴテ起こしの技法は、出品物の中では少数派なのだが、よくまとまった。角の「隈竹」に籐で虫留飾りを千鳥に配したのは、プロの私としては相当に大変に憎い。手にも籐をべた捲きにしたことはそれ程のことではないが、取り付け部分の意外さ(素っ気なさ)に脱帽。やっぱりアマチュアは面白い。

-宮﨑 珠太郎-


自由創作の部

花六つ目行燈

 籠谷 明〔栃木県宇都宮市〕

サイズ:20×20×63

 古来より和紙と合わせ使った作品は数多くあるが、この作品の良さは未完の期待である。もう少し円筒型を横に大きくしたほうが、編目と色を透かし、こぼれ来る明りにゆったりした大きさを感じるのではないだろうか、せっかく可塑性の優れた竹を素材にしているのだから、形に工夫が欲しい等と要求は沢山ある。しかし、印象は爽やかで作者の素直な感性が現れていて気持ちが良い。

-日原 公大-