第17回全国竹芸展入賞作品(平成24年度)

最優秀賞

菱掛編花籃

 渡邉 孝作〔栃木県那須塩原市〕

サイズ:23.5×34×20.5

 底部の長六角から上部の楕円形へと丁寧に底から編み上げられた花籃で、編みの交差とそれによる軽妙な奥行き感が生み出され、広い口縁部からうかがえる内部の繊細な編みが美しい。積み上げられた竹工の安定感がうかがわれる。難のない丁寧な口縁の仕上げだが、花籃の編みとその造形に対しては重厚過ぎるようである。反対に高台はきゃしゃな感じがあり、底部の張りがこの作品のもう一つの要所であろうことを考えると、惜しいところであった。

-諸山 正則-

優秀賞

輪廻

 杉浦 功悦〔大分県別府市〕

サイズ:40×65×42

 竹ひごの直線の連続が、ダイナミックなうねりを見せながら、エッジの立ったトンネル状の空間を構築している。竹の造形の透ける効果を充分に生かした巧みな構造である。トンネルは時にねじれ、翻りながら、循環する空間を築いている。360度いずれから見てもフォルムは変化に富み、躍動感に溢れた表現となっている。

-外舘 和子-


技能賞

鉄線束ね網代花籠

 室井 光央〔栃木県那須塩原市〕

サイズ:14×14×28

 板割り材を使用し3本寄せの鉄線編みで透かし網代編みにした内篭に外側より柾割り材

の束ね編みを着せ編みにした花籃である。

 柾材12本を束ねて12組を輪弧とした底部及び立ち上がり部は力強く中間部には広い窓を開けて軽やかに仕上げている。染色にもう一工夫あればよりいっそう引き立った作品になったと思うが、長年の修練に培われた技術は見事である。

-田中 旭祥-


交色網代盆「秋模様」

 藤田 千種〔栃木県那須塩原市〕

サイズ:33×42×5.5

 楕円形の盆の見込は連続桝網代で編まれているが、材料を染め分けて、同一の編目の文様に色調の変化も工夫されている。裏側は網代で裏打し、立ち上げは縦の線と編のバランスも良く、涼しさを引き立てている。ともすると技巧に走りがちのところを押さえて、格調ある仕上げとなっている。

-勝城 蒼鳳-


デザイン賞

かさね四重六つ目盛籃

 藤原 広子〔栃木県大田原市〕

サイズ:26×35×20

 麻ノ葉と六つ目を組み合わせた長六角型の盛籃である。

 本体は2枚編んだ生地を腹合わせにして、さらに幅広竹で生地を上下から押さえて籐巻にしながら菱文様を出している。2本手は本体に合わせて角出しとして非常にスッキリとしたデザインに仕上げており、小品ながら使ってみたくなるような作品である。

-田中 旭祥-


波網代編手付き盆

 伊坂 富子〔栃木県大田原市〕

サイズ:24×40×5

 竹ひごの幅や色調にリズミカルな変化を持たせた、いかにも楽しげな網代編の文様が、盆の面一杯に拡がっている。左右の持ち手は、盆の縁のラインに沿って自然なカーブを描き、無理なくフォルムの一部となっている。受け手に対し、これを使う楽しさと所有する喜びを同時に与えるに違いない機能性とデザイン性を共存させている。

-外舘 和子-


花籃「シックスティ」

 井上 守人〔栃木県那須塩原市

サイズ:25×25×33

 かたち全体のボリュームに対し、適切な目のサイズで鉄線編がなされている。縁のラインはあたかも人形の両袖を思わせるシンメトリーな曲線を描き、フォルムに変化を与えるとともに、全体を引き締めている。形態の雰囲気にあわせ、おとしの口を斜めにカットするなど配慮の行き届いた作品である。昨年のデザイン賞受賞作に通じる雰囲気もあるものの、紛れもないこの作者自身の創意工夫が、新たな造形を成立させている。

-外舘 和子-


新人賞

ベジ・バスケット

 尾畑 美智〔栃木県大田原市

サイズ:44×47×38

 六つ目の籠の目に別竹を差して編む技法の一種でこの大きさにするのは容易ではない。白錆の籠に手の形も合っていて、野菜を入れても観賞でき、花活けとしても楽しめる作品であり、竹籠としての素材の味も良く出ていて良品である。

-勝城 蒼鳳-