最優秀賞
古竹手付盛籃「絣」
土屋 為良〔栃木県宇都宮市〕
サイズ:30×41×23
渋い作品である。程良い楕円の本体に実に手の込んだ手を付けたが、ケバケバしさが感じられない落ち着いた雰囲に仕上がった。
枡網代の表裏合せの平面と、雲海を思わせる四本縄目編みの立ち上がりの高さ、手の高さ、曲線、みんなバランス良くまとまった。
手の曲り角の側面にも表皮を見せようとした苦心、普通の人にはわからないだろうが、僕は痛いほど感じ入りましたヨ。
古竹の品格と作者の人格が品良く編み込まれた作品です。
-宮﨑 珠太郎-
優秀賞
飾箱「AKAONI」
佐藤 敦子〔千葉県佐倉市〕
サイズ:31×31×8
「AKAONI」とは何とも「小憎らしい」作品名であり、作者の心意気がふつふつと感じられる。三本網代の編み組自体は、それほど技巧的とは思われないが、ヒゴの幅を変え、かつ、それらを赤と黒とに染め分けて不思議な波模様を描いた芸術的センスは、素人離れして中々のものと見うけられる。ただ惜しむらくは、内側の布張りがきらびやか過ぎて表の波模様と違和感がある。煤竹色に染め上げた細いヒゴで網代に編んだ二重張りにするか、あるいはおとなしい無地の布張りにしたら最優秀作品として選ばれていたかもしれない。次回を期待したい。
-柏村 祐司-
デザイン賞
風車組楕円籃
飯村 幸雄〔東京都墨田区〕
サイズ:22×47×5
柔らかな感じの盛物籃である。六ツ目の中に風車の文様が形とマッチして素敵だ。実際には鉄線編に籐を後から差したのだろう。縁も丸藤の芯を使って巻き上げの技法で立ち上げてある。軽い感じは心良い、秋の果実をそっと盛って眺める楽しさも連想できる作品である。
-勝城 蒼鳳-
バスケット「Summer」
磯飛 節子〔栃木県黒羽町(現 大田原市)〕
サイズ:8×40×30
柔らかい質感の鈴竹を、四つ割にして編み込んだ感触と四角い形がバランス良くまとまっている。軽やかに、夏の町に出かけたくなるような新鮮な風を感じて気持ちがよい。
取っ手を支える止め具は同じ素材をダブルに使い単調になりやすいバスケットの大きな面にアクセントを与え作者のセンスの良さを感じさせる。
-日原 公大-
新人賞
挿し六つ目色紙掛け
山岸 寅雄〔栃木県大田原市〕
サイズ:45×45
太いヒゴで六つ目編みし、その網目に茶色に染め上げた細いヒゴを通したものである。このこげ茶色に染めた細いヒゴが、六つ目編みにアクセントを与え、木目細かなモザイク模様を生み出し、デザイン的に面白い。残念なのは、色紙を掛けてしまうとせつかくのモザイク模様が隠れてしまうことである。短冊掛け、あるいは花一輪掛けなどに手直ししてはどうだろう。
-柏村 祐司-
横矢筈文筒型籠
柴田 嘉代子〔千葉県佐倉市〕
サイズ:21×21×51
シンプルな筒型に表情を与えるというのは難しいことだが、経験3年でこんなことをやってのけるとは、参りましたネ。
内側に二本飛びゴザ目編み、外は松葉編みの二重構造、それに横矢筈刺しのアクセント、良く効いている。
黒竹で作った3本の脚がちょっと問題。安定のためには3点支持でなくて底面を拡げた形にした方が良かった。姿の変化にもなる。
クラフト部門となると、もっとしゃれたネーミングが考えられないか。
-宮﨑 珠太郎-
フロアースタンド(ピーコック)
伊藤 信〔栃木県宇都宮市〕
サイズ:38×42×58
読書の秋にふさわしい形だ。作品名と鑑賞者の感じ方が違っていても良いと思う。作品は作者から離れて一人歩きをするものだ。作品が自由におしゃべりをし成長して行くものだ。自由創作の面白さはそこにある。編み方は誰もが知っている四つ目と三角の笠は網代である。素材の色は年月が経ると共に変わりながら一生を過ごすことになる。
-勝城 蒼鳳-