最優秀賞
菓子器
米中 英夫〔千葉県佐倉市〕
サイズ:26×26×11
何十年仕事をしていてもうまくならないプロも多いのに、この作者は『玄人はだし』である。神経が行き届いた良い作品である。
表の染竹の枡アジロ、内の磨き竹の波アジロ共に端麗に編まれていて、絞り込み緑づくりのふくらみも安定感良く、縁竹の斑染がまことに自然に合い口を合せる目印になる。伝統工芸にあり勝ちな、過剰な縁飾りを排した点も、作者の心憎いばかりの品性のなせるところとみた。
優秀賞
根曲竹花籠
片岡 庄三郎〔栃木県大田原市〕
サイズ:40×40×21
無技巧の技巧、不完全なる完全、そこには、味が備わっている。この作品には、この事が当てはまっている。底の隆起(瘤)が形の美を形成して成功している。今後は細い鳳尾竹は、2本並べて作るのも面白い。
麻の葉編スタンド
田澤 昭吉〔栃木県馬頭町(現 那珂川町)〕
サイズ:29×29×65
自分の使いたいものを楽しんで作った作者の想いが伝わって来る作品です。竹の表皮を磨きにしたことが透光性をもたせることに成功しました。きれいな麻の葉編みで形良くまとまりました。全体のバランスはもう少し低くした方が良いと思われるが、柱の奇形竹にこだわったのでしょう。ソケット部分、シェードの支え部分が外から見えるだけに、もう少し安心できるように研究されると、もっと良くなるでしょう。
デザイン賞
古竹手付盛籠
土屋 為良〔栃木県宇都宮市〕
サイズ:34×54×27
花丸網代編の盛器である。外側は底になる部分だけを編み、手になるところは編まずに残して上部で合せて手としてある。両側のヒゴの線が竹の特性を生かしている。全体の形も無理がなく、夏季に多く使われる竹の作品として、涼しさを感じさせ工芸としての用の美が十分表現された作品に仕上がり格調のある作品である。
菓子器
飯村 幸雄〔東京都墨田区〕
サイズ:30×33×21
網代編の手付の菓子器である。中央の部分を密に両側を透かして編み、編目も木目編として動きを出していて軽快な感じとなり、長方形の手付の作品ですが隅曲げのアールも硬くならず細心の制作も明るく感じ白錆による清潔感は、クラフトとしての簡潔な作品となり優品である。
竹あかり
福田 光子〔栃木県大田原市〕
サイズ:15×15×32
円筒形に編んだ竹の裏側に紙を貼った単純な形のスタンドです。亀甲模様に斜めの線が6本入った酒落たデザインの軽やかさに票が入りました。惜しむらくは全体の形と編のデザインの大きさのバランスが採れず、小さく纏まってしまった感を否めない事です。造形表現は全体の調和を第一に考え、形の美しさ強さを表す努力をしなければなりません。一層の精進を期待しています。
新人賞
松葉編花籠
山田 光信〔栃木県西那須野町(現 那須塩原市)〕
サイズ:36×36×19.5
端正にして存在感のある作品である。壺型の花籠として、松葉編で全体をまとめ室編でアクセントをつけ、表面を白錆としたもので形としても整ったものである。ただ、室編の位置や作品全体の安定感の点で一考を要する。今後は、独創性、テーマ性といったことにも目を向け、ご精進いただきたい。
柾割網代編手さげ
大田原 紀子〔栃木県西那須野町(現 那須塩原市)〕
サイズ:12×33×35
第一印象はやわらかくて、心安まる様な安全を内包する入れ物だと思いました。編みもしっかりしています。「視触覚」云う言葉があります。見る事で触っている様な感覚の事を云いますが、それを感じさせる充分に作者の想いと形態が一致した良い作品です。只、大変残念な事に、手のバランスと太さが前述を打ち消してしまう程弱々しい感じが致します。又、紐の長さ、太さ、色合いにも、もう少し神経を行き渡らせてほしいと思います。全体の事を考えて仕上げる様にして下さい。
らんとかまきり
久保田 俊次〔静岡県静岡市〕
サイズ:20×31×85
蘭の花上のカマキリが、今まさに飛び立とうとしている装飾的な作品である。竹肉の部分を薄く削り巧みに利用したもので、全作品の中でも異色なものである。今後、竹という素材をより多様的にとらえ、新しい分野を開拓する意味からも、作品全体のテーマ性、存在感のある作品を期待する。